最近はSNSなどで学歴が重視されない社会になってきたというような論調があります。しかし、それは主にSNSの中の世界の話であって、僕が観測する世界ではまったくそんな事実はありません。いくつになっても学歴の話になりますし、転職や業務受託でも学歴を見られます。
その証拠に、令和の子供たちも幼稚園の頃からインターナショナルスクールに通ったり幼児教室を並行したり、小学生にもなれば日能研やSAPIXなどで日夜しのぎを削っています。そこまでしてでもよい学歴を追いかけるのです。最近では日本の偏差値の高い大学に外国人も殺到しています。なんだかんだみんな未だに学歴は重要だと思っているのです。
では、なぜ学歴は重要なのかという点について再考してみましょう。
勉強する理由
まず、そもそも勉強する理由について考えてみましょう。
生まれた時点で一生分以上の資産を持ち、元本を減らすことなく利息や配当だけで生活できてしまう資本家階級の人もわずかにおりますが、ほとんどの人は働かないと生活を維持することができない労働者階級です。
そして、労働者階級が勉強する理由は、一義的には社会で自分の代替可能性を下げるためです。代替可能性が低い(=自分の存在の替えが効かない)ほど、時間単価が上がってゆきます。反対に、代替可能性が高い(=誰でもできるような仕事しかできない)ほど、安くこき使われるので、人生は苦しいものとなります。

具体例で検討してみましょう。
具体例
最も代替可能性が高い人材は、法律で制限されている最低限の時間単価である「最低賃金」で働かざるを得ません。彼らは1時間働いたら概ね1,000円くらい稼げます。この水準で働く方を想定して仮にAさんとしましょう。Aさんが1か月過ごすために額面で30万円必要だとしたら、300時間働く必要があります。1か月に1日も休まずに働いても、1日10時間働かないといけません。さすがにそれは現実的ではないので、週に1日休むとしたら毎日12時間働くことになります。
一方で、高度な専門職などの人材は代替可能性が低く、時間単価は高くなります。例えば、優秀な弁護士であれば1時間5万円くらい稼げます。この水準で働く方を想定して仮にBさんとします。BさんはAさんと同じ生活水準で良いなら、1か月に6時間働けばおしまいです。1日あたりではなく、1か月で6時間です。ちなみにBさんがAさんと同じペースで働くと、1か月で1,500万円稼げます。

このとてつもない差を見たら、Aさんの条件ではバカバカしくて働けないですよね。社会に出る前の人には信じがたいかもしれませんが、Aさんの時間単価1,000円もBさんの時間単価5万円もどちらも現実世界の話です。これはもはや同じ労働者階級とは言えども別次元と言っても過言ではありません。業務外の自由時間を生きている時間ととらえるのであれば、命の長ささえ違うとも言えるでしょう。
資本家階級に生まれるかどうかについては運次第だとしても、労働者階級の中ではアリとキリギリスの寓話のとおりで、問題は格差ではなく、代替可能性を下げなかったAさんの生き方なのです。なお、イソップ寓話ではキリギリスは冬を越せなかったことが暗示されていますが、現代社会では租税を通じて再分配が行われ、生活保護の受給も可能なので、イソップ寓話に比べればよっぽどやさしい社会となっています。
さすがにこれほど重要な論点については義務教育で教えてほしかったですが、まあ、倫理的に言えませんよね。
学歴が重要な理由
では、Bさんのようになるには、どうしたらよいでしょうか。また、少なくともAさんのようにならないためにはどうしたらよいでしょうか。
世の中には自分がやりたいことが明確で、それを価値のあるものにしてしまう人もいて、彼らは学歴は一切関係ない場合があります。しかし、ほとんどすべての人は自分がやりたいことなんてないし、あったとしてもビジネスにならない場合が大半です。そのような一般人は、社会(会社)の歯車としての性能を磨くことで代替可能性を下げることになります。そのためのトレーニング結果が学歴や資格として記録されます。
大学などを卒業すると、まずは会社などの組織に就職することが一般的です。そこで、学歴は労働市場の情報の非対称性を解消するためのツールとして利用されます。これが「学歴フィルター」と呼ばれるものです。企業の存在する目的はより多くの利益を獲得することですから、高い給与を支払ってでも代替可能性が低い優秀な人材を採用することで投資利益率を向上させる必要があります。新卒市場における信憑性の高いシグナルは学歴(や一部の資格)くらいしかないので、学歴が高いこと(や一部の資格の保有)で得られるチャンスがあるのです。
もちろん実際には必ずしも学歴イコール職務能力とは限らないのですが、僕も人事部で新卒・中途採用をやってみて面白いくらいに能力が学歴通りで驚いた経験があります。また、普段仕事をしていて「この人には勝てないなぁ、優秀だなあ」と思ったらやっぱり東大出身だったりします。このように、体感的にも仕事の能力は大体学歴通りで、時間や予算が限られた採用活動という場において学歴で判断するというのは合理的であることを身をもって実感しました。
優秀(≠有名)な企業に就職して、優秀な同僚と切磋琢磨して経験を積めば、専門性が高まって時間単価がぐんぐん伸びていきます。組織側の問題で昇給が止まっても、転職をすることで再び高めることができます。また、職種によっては独立することで会社への上納金が不要となるので、売上高総取りとなって時間単価を高めることもできます。
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