公認会計士になった理由と辞めた理由

公認会計士に求めたこと感じた限界、その先の道についてお話します

僕はかつて10年弱公認会計士として働いていましたが、今では名乗ることはあれど公認会計士の仕事はしていません。しかし、今の僕は公認会計士のキャリアがベースになってくれているおかげでとてもうまく行っています。

公認会計士を目指すまでは日商簿記検定3級すら持っていないという会計に縁のない人種でしたが、ゼロから無事に試験合格し、また離れることになりました。僕がなぜ公認会計士になり辞めたのか、そしてその先どうなったかについて書いてみます。

目次

公認会計士になった理由

  • 将来に絶望する仕事に就いてしまい、未来を変えたかったから
  • 公認会計士は高い専門性を持ち、独立して自由に稼げそうだったから
  • 高単価で働いてFIREできそうな気がしたから

未来を変える

僕が最初に就職した会社では証券リテール営業をしていました。しかし、数か月間上司の姿を見ているうちに「ここは自分がいるべき場所ではない」と強く感じるようになりました。

彼らは毎月リセットされるノルマのプレッシャーと戦い続け、心身ともに疲弊していました。若くして白髪になっていたり、(仕事のせいではないかもしれませんが)髪が薄くなっていたり、暴飲暴食で不健康な体型になっていたりと、苦悩が外見に表れているように思えました。女性従業員の中には、生理用品をわざとデスクに置いて体調不良をアピールする人もいました。また、ノルマ未達の期日直前に、特定の男性顧客宅に長時間訪問することで数字を埋められるという、触れないほうがよさそうな話まであり、職場全体に殺伐とした空気が漂っていました。こうした過度なプレッシャーの環境は、自分には合わないと痛感しました。

さらに、社員の多くはCFP(1級FP技能士)どころかAFP(2級FP技能士)すら取得できず、専門性がまったく感じられませんでした。一方で、専門知識がなくても営業成績が良い人が少なくないのです。つまり、「知識がある」ことと「売れる」ことは全く関係ないということです。自分の職責を考えれば専門性よりも収益性が重要であることは明らかですが、この会社では営業マンの価値が「専門性」とは全く関連せず、「押し込み営業の巧さ」になってしまうという事実は僕のキャリア形成の面ではマイナスにしかならないと思いました。血肉になる知識を身に着けることにモチベーションが与えられず、目先の報酬を得るための作業に特化する日々を何年も過ごすことが奨励される体制には「人材の使い捨ての恐怖」しかありませんでした。実際、700人以上もいた同期は2年程度で半減しており、先輩社員たちも転職を試みるも同業・同職種以外に活かせるスキルがなく、苦しんでいました。

加えて、強烈な縦社会の風潮もあり、新人は職場や飲み会でパシリ扱いされ、本当にしんどい思いをしました。給与も低く、カフェはベローチェが定番で、日高屋のタンメンですら「贅沢品」として食べるかどうか悩むほどの生活水準でした。毎日が絶望的に感じられ、明らかに精神的に不健康でした。

「この会社は自分に合わない」という直感は入社式の段階で既に芽生えていましたが、入社から数か月もしないうちに確信へと変わりました。ただ当時の新卒の自分には「他の会社も同じなのかどうか」が判断できず、どうにもできないまま無心で日々を過ごしていました。就職活動のときには引く手あまたで多くの選択肢があったはずなのに、なぜ自らこんな環境を選んでしまったのか──その事実を受け入れられず、毎日愕然としていたのです。

自由と収益性

「この状況からいかに脱却するか」をテーマに日々悶々としていたところ、訪問営業を繰り返す中で少し仲良くなった税理士と話しているうちに、キャリアのピボット先として公認会計士が候補として浮上しました。これまで公認会計士については何も知りませんでしたが、彼の話を聞くうちに、高い専門性を持ち、独立して自由に稼げそうだというイメージを持てました。また、高単価で働いてFIREできるのではないかという期待が持てました。

また、書店で偶然見かけた合格体験記を手に取ると、高校の同級生がちょうど掲載されていたという強烈な縁を感じるイベントもあり、自分の中でどんどんしっくりきていました(掲載されていた方とは喋ったこともありませんが)。僕は公認会計士になることにして退職し、翌年論文式試験に合格しました。

公認会計士を辞めた理由

  • 入社当時から激務で、どこまで昇進してもずっと激務だったから
  • 昇進するにつれて価値を感じない仕事が増えてきたから
  • 昇進が社内政治に支配されていてモチベーションを保てなかったから
  • 不当な人事で優秀な人がどんどん辞めていって仕事量は増える一方だったから
  • 天才や監査・会計が好きな人には勝てないと思ったから
  • 会計士の収入はアップサイドが限定的でFIREはできないとわかったから

激務とモチベーション

その後僕は監査法人に就職し、証券リテールに比べて圧倒的に幸せを感じるようになりました。当時は常時三六協定違反で土日祝日関係なし、朝までサービス残業したりしていたので、いわゆるブラック労働環境ではありました。しかし、黙々と作業する仕事は社会不適合者である僕に合っていたし、それなりには給料がもらえていたし、なにより前進している感覚がありました。それは、仕事の中で獲得できる知識や発想を利用して将来追加的な収益を獲得できる確信であり、あまり損をしているという感覚は持っていませんでした(※現実には損しています)。しかし、証券リテールの時に接した上長や支店長などよりももっと明確な「僕が何者であるか」という強烈なアイデンティティを獲得することができた実感がありました。

しかし、そのモチベーションも現場を統括するようになったあたりで終わりを迎えました。書類作りなどの形式的な作業や日程調整ばかりの毎日で、そこに更に上司と部下の不平・不満の受け皿や、やり残された仕事の尻拭い役がのしかかってきました。それらは僕にとってはどうでもよい価値のない仕事にしか感じられませんでした。これらの仕事に莫大な時間が取られる一方で会計・監査の知識はどんどん薄れゆき、後退している感覚を持ちながら給与も伸び悩むという割の悪いアルバイトをしているような感覚に陥りました。ここまでに獲得してきたアイデンティティも風化してゆきました。

さらに、人事考課制度も追い打ちをかけてきました。監査法人の経営が厳しくなるに連れて、人事考課が「成果主義」に移行していったのですが、監査がそもそも誰がやっても同じ結果なので、成果主義がマッチしにくい仕事です。その性質が悪用され、社内で力を持った特定のパートナーの下にいると昇進が極端に早いというような、真面目に貢献している人の士気を下げるような構造になっていました。その結果、縁の下の力持ちだった優秀な人たちがどんどん退職し、社内政治家とその子飼いばかりがのさばり、各チームの現場主任(インチャージ)とマネジャーの負担が激増してゆきました。

ちなみに僕の退職後の話ですが、収益性の悪い事業部だったので最終的には解体され、社内政治家とその子飼いたちの大部分が閑職に追いやられました。また、とある社内政治家は監査事故を起こして監査報告書にサインできなくなり、島流しになっていました。立場というのは相対的であり、諸行無常ですね。

FIREはできなそう

監査法人所属の公認会計士でFIREできないかと言えば、必ずしもそうではないとは思います。新卒で会計士になって最速でパートナーになれれば、60歳くらいには税後で3億円以上は稼げていると思います。でも、それってもはや時期的にFIREというかもはや定年だし、そこに至るためには列挙したデメリットに耐えながら、東大卒やフラッシュ暗算チャンピオンみたいな天才たちを差し置いて勝ち抜く立ち回りが必要になります。さらに、なんとなく公認会計士になった僕とは違って会計・監査が死ぬほど好きでこの道を選んだ奇特な方もいて、まるで週刊少年ジャンプを読むようなノリで週刊経営財務を読む彼らにも勝たなければいけません。

このように、ハードルは高すぎる割に期待値は大したことのない監査法人所属の公認会計士のキャリアそのもの自体に対する関心が薄れてゆきました。また、僕の年収は1,000万円~ありましたが、家庭を持ったらその程度ではFIREに近づくどころか、貯まりもしなかったので、このままでは目標を達することができないと理解しました。

これらの理由により僕のやる気は急降下し、監査法人を辞めることにしました。公認会計士資格に縛られる必要はないのですが、せっかく会計・監査がわかるから活かしたほうが有利そうという発想と、別の業務をやったことがないという自信のなさから、グループのFAS部門に転籍することにしました。しかし、もう会計・監査に対する情熱がすっかり失われていて追加的な知識が全然頭に入ってきませんでした。また、FASを踏まえて独立した人たちを見て、こんなにキツい仕事なのに時間単価1万円程度にしかなっていないという現実に更に萎え、1年少々で退職することにしました。

公認会計士になったことの人生への影響

公認会計士になったことで、絶望しかない仕事を辞めて未来を変えることができたし、高い専門性と独立の自由を得ることができました。FIREは公認会計士の時間単価では厳しかったので、次はそこが課題でした。

一般的な公認会計士の転職と言えば、「会計キャリア」として、他の監査法人、税理士法人、FAS、IPO支援、内部統制関連、財務・経理、CFO、独立(会計事務所)などが多かったのですが、僕はたまたまご縁があったこともあって収益性の高い業界の社長室で働くことになり、社長直下で経営上の様々な問題に対峙する経験を積みました。ここで、公認会計士のキャリアが非常に役に立ちました。企業の活動全般を把握していたこと、ビジネスを数字で判断できること、仮説思考で即提案して経営者に即断させられること、朝まででも徹底的に付き合い続けることなどにより、ものすごいスピードで非常に大きな成果を出すことができました。

その後、その経験を活かして独立したコンサルタントとなりました。時間単価も一般的な公認会計士の単価の数倍得られているので、FIREも見えてきました。現状は胸を張って大成功していると言えると思います。公認会計になったこと、そして公認会計士からさらにピボットしてよかったなと心から感じています

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